アオミドロとは
神奈川県にある芦ノ湖で生み出された、マラブーのみで作られたストリーマーです。
湖畔にある「フィッシングショップ・ノザキ」のオーナーである野崎茂則氏によって考案されました。
私がこのフライを知ったのは10年ほど前ですが、今ではネットショッピングで検索すると商品化された完成品フライが出てくるまでに定着しています。
それは、このフライが「釣れるフライ」であることを象徴しているのではないでしょうか。
アオミドロはフックとスレッドを除けば、マラブーのみで作られています。
シンプルな造りにも関わらず、実際に巻いてみると、マテリアルの選び方や量、取り付け方法が非常に繊細で、絶妙なバランスによって構成されています。
「少ない方がしなやかに動く」という経験に基づいた理論から、ファイバーの本数をできる限り抑えて作られているのが特徴です。
そして使用する材料が少ないにも関わらず見事なグラデーションで立体感が演出されています。
「ボディーの向こう側が透けるくらいがベスト」とのことで、巻き始めは不安になるほどマラブーの量が少ないです。
この点は既製品では再現されていない部分ではないでしょうか。
本来の姿を手にするには、芦ノ湖にあるフライショップ・ノザキへ足を運ぶか、自分で巻くしかないのではないでしょうか。
記事の信頼性
釣り雑誌「FlyFisher」2012年1月号(つり人社)に掲載されているご本人への取材記事およびご本人がタイイングされている動画(YouTube)等を参考にしております。
アオミドロをタイイングしよう
マテリアル
使用する材料はこれだけです。
<スレッド> ユニスレッド、色:オリーブ、太さ:8/0
<フック> アキスコ(AXISCO)、AFB 1720、#10または#8
<テイル・ボディー> マラブー 各4~5本、グリーン
<スロート> マラブー 4本、ボディーより明るいグリーン系
<ショルダー> マラブー 8本、ボディーより濃いグリーン系
<トッピング> マラブー 3本、ブラック
<ヘッド> マラブー ボディーに使ったグリーン2本とブラック2本を合わせて使用
フックはアキスコ(AXISCO)の「AFB 1720」。ロングシャンクです。
サイズは#10または#8。
「AFB 1720 #10」が無い場合、TMC 5212 #8が太さやシャンクがほぼ一緒で、ゲイプが少し広いバージョンといったところで、代用できるかもしれません。
マラブーはグリーン系3色とブラックの4種類。
テールとボディに左上のグリーンを、スロートに右下のオリーブを、ショルダーに左下の濃いグリーンを、トッピングにブラックを使用します。
ファイバーの本数をできる限り抑えるため、次の使い分けをします。
・先端が細い黄色枠部分はトッピングに使用する。
・先端までフリューが行きわたっている赤枠部分をテイルやボディー、ショルダーに使う。(少ない本数でボリュームを稼げるよう、ファイバーの先端までフリューのあるものを使う。)
・青枠部分は、先端のファイバーが柔らかい部分をスロートに使用する。
軸を中心として、片側が柔らかく、反対側はすこし張りのある場合があります。
だらーんとして柔らかい方を使いましょう。
タイイング
今回はフックサイズ#10を使用しました。
アイ側のシャンク1/3から下巻きをスタート。
テイルとなるマラブーをフックポイントの上まで巻きとめる。テイルの長さはシャンクの2倍が目安です。
スレッドで巻きつぶしたところがボディーの下地になります。
下巻きのスタート位置に、ボディーにするファイバー4本(片側2本)をシャンクの真横から下の方へ巻き留めます。
ボディーのファイバーが左右均等になっていることを確認します。
左右のバランスがわるいと、泳ぎが悪くなるそうです。
スロートにファイバー4本を巻き留めます。
色はボディーより明るいものを選びます。今回はオリーブ色を使用。
長さはゲイプ辺りまでとします。
ショルダーに、ボディーよりも濃い色を8本(左右4本ずつ)を巻き留めます。
留める位置はボディーと重ならないようにします。
左右対称になっていることを上から確認します。
トッピングにブラックのマラブーを3本留めます。
長さはテイルよりも少し短くします。
上からの図です。
ボディーに使ったグリーンとブラックを2本ずつ(4本まとめて)巻き留め、スレッドに寄り付けて、シャンクに巻いてヘッドを作ります。
ハーフヒッチなどでフィニッシュ後に接着剤を垂らして完成です。
完成図。
ヘッドが少し大きく(長く)なってしまいました。もっと小さい(短い)方がいいと思います。
水に濡らすとこれぐらい細くなります。
実際に水に入れると、もっと膨らむのでちょうど良さそうです。
おわりに
野崎氏がまだ若く、髪の色が黒々としていた頃の動画を拝見すると、昔はシャンクにウェイトを巻いていたようです。
また、昔はマラブーの量が現在の2倍ほどあり、徐々に進化を遂げて今の形となっているようです。
今回は、現在(2012年)の形をできるだけ忠実にご紹介しましたが、もちろん忠実でなければ釣れないわけではありません。
ネット検索すると様々な形でカスタムしたフライが紹介されています。
細部をリメイクして自分のフライを作ることが、タイイングや実釣の楽しみのひとつとも言えます。
その場合に、作者である野崎氏の考えを理解してカスタムすることで、洗練された部分を損なうことなく作ることができるのではないでしょうか。
釣り方としては、ノザキツイストと呼ばれる独自のリトリーブ法と組み合わせると、よりリアルな動きを見せるそうです。
通常のリトリーブでも、止めずに細かく引き続けると近い効果が得られるとのこと。
湖の釣りが苦手な方や、湖で釣ったことのない方はこれを機に足を運んでみてはいかがでしょうか。